自分探しの旅
「たとえばこのドラムで、京介はこの7の目だったとする。」

 龍仁はコーヒー缶に書かれた7の数字を指さした。

「円心は一つ上の6だ。ドラムは軸を中心に円を描くようにいくつもの目がある。」

 さらに龍仁は、左手の人差し指と親指で輪をつくってコーヒー缶に書かれた数字の部分にあてた。そして右手で缶を動かしながら言った。

「でも実際にスロットマシンの前で止まる目は一つだけだ。それが『今』ということになる。『円心』の時6で止まった。そして『京介』の今は7で止まっている。」

 龍仁の左手でつくっている輪が広がって、6と7が見えた。

「それが何らかの理由で『今』の枠が一時的に広がったんだ。つまり自分の中に『円心』という自分がいることに気づいたんだよ。」
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