自分探しの旅

第15話 「不審人物」

京介は新宿駅からJR中央線快速に乗って帰宅の途に着いていた。
 遅い時間にしては車内は思いの外込んでいた。着ているコートが暑かった。京介は車両の真ん中付近の吊革につかまって、外の過ぎゆく景色をぼんやり眺めていた。スリリングなアクション映画を見た後のように、体は少しだるい。短時間にあまりにも多くのことを見てきたせいか、まだ気持ちの整理が出来ていないのが自分でもよく分かった。心の暗闇の中には、いくつもの水晶玉が断片的な景色を映し出しては消えていく。確かに最初の疑問には一応の答えが出た。しかし円心の一生は謎が謎を呼んでいる。

『円心と僕はこれからどうなっていくんだろう。』

『無雲という人物は「今」もどこかにいるんだろうか。』
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