自分探しの旅

第16話 「開かれた心眼」

『さて、これからどうするか。』

 そう考えているうちも、人の流れにそって足が動いていた。京介はその辺りの地理に詳しいわけではなかったが、とりあえず小金井のアパートがあるであろう方向へ向かって歩き出した。歩いて帰るには遠すぎる。でも今さら駅に戻る気にもなれない。サングラスの男は何とか巻いたものの、ひょっとしたら仲間が探しているかもしれない。京介は、次第に膨らんでいく妄想から逃げるように足早に歩き続けた。駅を離れるにつれ建物の明かりは少なくなったが、車の流れは途絶えることはなかった。歩きながらも、後ろから来る車のヘッドライトが、次々と足もとを照らしていく。

『さっきの男は・・・』

 京介は車内の男のことを考えていた。
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