自分探しの旅
「とにかくすぐそっちに行きますから、そこを動かないで。どこか人目のつきそうにない所はありませんか。」

 京介は辺りを見まわすが、土曜の昼は人であふれていた。そして向かいのビルの二階に喫茶店があるのが目に止まった。

「わかりました。ビルの二階の『カチューシャ』ですね。そこで待っていて下さい。いいですか。いざとなったら昨日のことを忘れないで下さいよ。」

 京介は吉村に言われるまでもなかった。

『絶対に昨夜のような油断はするまい。』

 京介はしっかりと心に刻んだ。


 店内は昼食をとるビジネスマンで混んでいた。

「相席でよろしかったら空いていますが。」

 京介はテーブルの一角に腰掛け、コーヒー付きのランチを注文した。
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