自分探しの旅
「・・・あっ、いや。悪かった。今の話は忘れて下され。はっ、はっ、はっ。」
無雲はもとの笑顔に戻っていた。
真の世界を知る旅―円心にはその言葉が脳裏にこびりついた。円心はその夜眠れなかった。
それから数日たったある朝。
夜もまだ明けやらぬ時刻。円心はいつものように、読経をするために本堂へと向かった。そこには身支度を終え、正座している無雲の姿があった。傍らには藁じきの床がていねいに巻かれていた。
「今までいろいろとお世話になり申した。」
山伏はそう言って深々と頭を下げた。急な旅立ちであった。
「お体はもう大丈夫ですか。」
円心は言いながらも、突然の別れにとまどっていた。無雲とはもっと多くのことを語り合いたかった。
「おかげさまで、ほれこの通り。栄養のあるものを食わせてもらったで、ちと太ったかも知れぬわい。はっ、はっ、はっ。」
無雲はもとの笑顔に戻っていた。
真の世界を知る旅―円心にはその言葉が脳裏にこびりついた。円心はその夜眠れなかった。
それから数日たったある朝。
夜もまだ明けやらぬ時刻。円心はいつものように、読経をするために本堂へと向かった。そこには身支度を終え、正座している無雲の姿があった。傍らには藁じきの床がていねいに巻かれていた。
「今までいろいろとお世話になり申した。」
山伏はそう言って深々と頭を下げた。急な旅立ちであった。
「お体はもう大丈夫ですか。」
円心は言いながらも、突然の別れにとまどっていた。無雲とはもっと多くのことを語り合いたかった。
「おかげさまで、ほれこの通り。栄養のあるものを食わせてもらったで、ちと太ったかも知れぬわい。はっ、はっ、はっ。」