自分探しの旅

第7話 「放浪」

 二人の長い旅が始まった。
 来る日も来る日もあるいは山の中をあるいは人里を、どこへ行くともなく歩き続けた。山に入っては山の物を食らい、里に入っては托鉢によってわずかながらの喜捨を受けた。 円心はすべてを捨ててきた以上、何としてでも真の世界を知るまででは寺に戻れないという、悲壮な決意があった。無雲は知ってか知らずか、そのことについては全く触れようとしない。無雲という人物は打てば響く鐘のようであるが、自らはめったに口を開かない。
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