自分探しの旅
南朝方の後亀山天皇が、北朝方の後小松天皇に譲位する形で南北朝合一がなされたのは、西暦1392年十月のことであった。時の権力者将軍足利義満にとって、それは公家内部の小事にすぎなかった。だが六十年近くたったとはいえ、民衆はかつての南朝の栄光を忘れてはいなかった。そして今、誉れ高き南朝の天子が街道を通ると聞き、その御姿を一目見ようと今か今かと待っていた次第である。無雲と円心も人垣の中にまじり、行列の一行を待つことにした。 
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