自分探しの旅
『和尚様は私のような不徳者をお許しにはならないだろう。いや、許してくださったとしても今さらのこのこと、帰って合わせる顔はない。』

 そういう思いを抱きつつも、帰郷の途に着こうとしている。書き置きは、残してきてはいた。自分がなぜ寺を出るのか、仏の道を捨てるわけではないなどということをしたためていた。しかし円心は、言い訳をするつもりはなかった。破門を覚悟だった。いっそ破門してもらうことで、自分に対するけじめをつけようとも考えていた。円心は、どのような沙汰も甘んじて受けるつもりだった。
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