愛の手
「なんで……っ」
お母さんは縁を切ったじゃない。
なんで、血縁者にこだわるの。
七代目である、叔父が……妻子をつくればイイじゃない。
「礼央」
あたしは動きにくい体で礼央の服をつかんだ。
体はもう痛みを通り越したみたいで、動きにくいだけだ。
「あたしと友達になったのは、ウソなの?」
「……」
「いつもそばにいてくれたのは、監視のためだったの?」
「……」
「気にかけてくれたのは、あたしが矢崎組の血を継ぐから?」
「……悪い」
そんな……
あたしは力なく、ひざまずいた。
全部、全部がウソ。
いままでそばにいてくれた礼央は、矢崎組の手先だったんだ。
あたしを矢崎組に戻すために。
あたしはキッと、七代目を睨んだ。
その目を見て、また嬉しそうに笑う。
「その目だ。姉さんそっくりな目」
強くつかまれた髪が痛くて、眉をよせた。
「矢崎組にふさわしい目だ」