愛の手
「遅い」
不機嫌な顔に不機嫌そうな態度。
まさに不機嫌。
「すみません」
逆らうことなく、あたしは素直に謝った。
実際はそんな遅くないはずなんだけどね。
いつも迎え担当の仁さんは、ちょっと遅れたって怒らないのにな。
今日はなぜか、総司さんみずからの運転で迎えにきていた。
黒塗りメルセデスのがまだマシ!!って思えるくらいに目立つフェラーリでのご登場。
総司さんは戸惑うあたしを一瞥し、そして――…
「はやく乗れよ」
冷たい一言を放ちました。