エースナンバー
あれから…美空は何も言わず格好を整えてシャワー室を出ていった。
どう考えても話しかけられる空気じゃなくて…
俺はただ、美空が出ていくまで…
ドアが閉まるまで…黙って見ていた。
「…あいつが…女」
開いた口からは…ただ間抜けな言葉が漏れる。
なんで…女が野球部に…?
それ以前に…なんで男のフリをしてるんだ?
どうしても…嘘つかなきゃいけない理由があるのか?
てゆうか…あんな球投げて…女かよ
『美空は本物だよ』
―――…ん?
ってことは…
俺は…女に負けたのか…?
口元に手を乗せてうずくまる。
情けない…。
『バラしたら…殺す』
バラせるかよ…
こんな情けないこと…
とりあえず、今は…
あいつから事情を聞き出してやる…