エースナンバー
こいつ…他人事だと思って…
「そんな人生なんて断固拒否してやる!
とにかく俺は今日からマウンドで球を投げる!
なにがなんでも、だ!」
そう言ったっきり俺は腕を組んで美空から顔を背けた。
我ながら…少しガキっぽいな、なんて思ったり…
「麻生君…」
美空が落ち着いた声で俺を呼ぶ…
俺は答えなかった。
やがてそんな俺に痺れを切らしたのか、美空は強行手段に出る。
「うわっ!」
左の肩を掴まれてグイッと体ごと引き寄せられた。
自然と美空と俺の距離は近くなる。
「何す…」
「麻生君」
「…え?」
「返事は?」
―――!!!
ニコリと顔だけ微笑んでるそいつの背後に何か黒い物が見えたような気がしたんだ…。
俺はコクリと息を飲むと、小さく頷いて「お…おう」と呟いた。
肩から美空の手が離れる…。
なんだかまだギュッと掴まれているような気がした。