エースナンバー
キャッチャーからサインが出る。


首を振る。


内角低めにスライダー…


そんな安全策は嫌だった。







腕を上げる…


キャッチャーの目がうろたえるのが見えた。




狙うは…ど真ん中。



















――カキーン!


高い金属音…

空に消えていく白球…




――…嘘だろ?



誰もが思った。











2ランホームラン。


俺のマウンドで過ごす、2度目の夏が…終わった。



  □




「…麻生くん?」


「…え」

俺を呼ぶ声に現実へと引き戻された。




前席のやつが俺を振り返っていた。





「なんだよ…」


「麻生くんがいたとこって…甲子園名門のあのT高?」


「…あぁ」


「うそ!すご!」

目を輝かせて俺を見る変なやつ…。



なんなんだ…こいつ


真っ白な肌は吸い込まれるようにきめ細かなで…

髪と瞳の色が、ミルクティーのように薄い。
くそ暑いのに長袖のシャツをキッチリ着込み、一瞬女かと思ったその顔は、校章の色を見て否定された。



女だったらピンク…
男だったら水色…



そしてそいつの襟元の校章は水色だった。
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