空想リフレクション
アカネの空
「アタシね、好きな人ができたんだ」


木漏れ日がユウスケの心と一緒に風に揺れた。


「ふーん。誰?まぁアカネのことだし、なんとなくわかるけどな」


「お、じゃあ当ててみ」

いたずらに笑ってみせる目元と口元から、恥ずかしさがこぼれていた。

「ケイイチ」

「…よくわかるね」

「まぁーな、聞かなくたってなんとなくわかるよ」


乾いた喉に缶ジュースを飲みほすと、冷たさが一気に胸までおりてきた。


「ふーん。アタシ、わかりやすいのかなぁ。ねぇ、ユウスケは?いないの?好きな人?」

「あぁ?蝉がうるさくて聞こえねぇなぁ」

「すーきーなーひーとっ!いないの?恋してますかぁ?」

「言葉にしなくても伝わると思ってたんだけどな」


並木の通りを抜けて、空き缶をゴミ箱にほうり投げた。

「ダメだぞ!好きな人には好きって言わなきゃ」

「そっか。そうかもな」

「夏は恋とチューブの季節なのだ!」

「恋に季節は関係ねーだろ」

「いいの!あぁ、予備校はイヤだけど、ケイイチと一緒の古文のクラスがアタシの救い」

「はいはい」


冷房の効いた校舎内へ入っていく。どこかに突き刺さるような感覚。



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