団☆乱ラン



あたしは覚悟を決めて、母さんの黒オーラに怯んだ目を向けている隆兄に話しかけた。


こういう時女って強いなって、自分のことなのに…冷静に考えを巡らしている自分に驚いた。



「り、隆兄?し、知ってた?」


なるべく、大きく、前の“鬼”に聞こえるように言った。


『しっ!だ、黙ってろ!檸檬…。』


ぼそぼそっと隆兄が言ったけど──
無視した。


今、叩(ハタ)かれるより、そんなの……このままで帰る方が恐ろしい。



「…ここのランチバイキングってめちゃくちゃ美味しいって!!」


「和洋折衷で、お刺身も、“タイのお刺身”もすごく美味しいんだって!!」


あたしは、パンッて、手を叩いて、“タイのお刺身もすごく美味しいんだって”を強調した。




「………。」

「………。」

「…………タイ。」


ポツリと呟いた母さんの、黒オーラが霞んでいった。



…オシッ!!

やった!軽くガッツポーズを決めた時──



「ねぇ、檸檬、隆くん?お腹すいてない?すいたわよね?うんうん、すいたはずよね?」



まくしたてて言う母さんにあたしたちは
うんうん、と頷いた。



「ヨシッ!!レッツゴー!!」


さっきとは打って変わって元気よく前を歩く母さん。


「「……………。」」


後ろに続くあたしたち。

「隆兄?黒オーラ無くなってよかったね?」


「ああ、そうだな。」


良かった、良かったって、あたしたちは、喜びを噛みしめ合った。






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