団☆乱ラン



呆然としながらも、レストランに戻ってきたあたしに


「檸檬?どうした?」

心配そうに隆兄が声をかけてくれたけど……



─あんなの、言える訳ないし………。



「ううん。何でもない。」


そうとしか言えなくて………。



目の前には美味しそうな料理があるのに…

隆兄が気を利かせて、あたしのお皿には、好物ばっかりのせてあって

さっき狙っていた
“サーモンのカルパッチョ”もあって──。


なのに…

胸一杯で、食べる気すら起きなかった。














動揺しまくっていて…
あたしは全く気づいていなかった。



リムジンで帰ってきたのすら、覚えていない。


隆兄がずっと心配してたのだって覚えていない。

玄関の上がり框で、お姉ちゃんに


「あれ?檸檬?牡丹の髪飾りは?」


「えっ?……あ。」


手を進めた先には髪飾りは付いてなくて。


お姉ちゃんにそう聞かれるまで髪飾りを落としたコトに全く気づかなかったんだ。





「もう、ばかね?檸檬ちゃん。あたしが武生に言って、探しといてもらうわ♪」


ご機嫌母さんはそう言ってにっこり笑った。





「あーっ!なんで!モンブラン無いんだよ!!」


お土産のレストランのケーキを見て、ブーたれる爽くんを後目に…



「疲れたから、寝る。」
あたしは自分の部屋へ上がった。


心臓はドキドキしっぱなしで、ホテルで見た刺激の強すぎるよ光景が頭から離れなくて。


あたしは、ゲンナリしていた。





────☆
< 123 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop