月と太陽の事件簿10/争いの樹の下で
実際、ひと回り以上年齢の離れた兄は変わり者だった。

否、『優秀な』変わり者だった。

某一流大学の法学部を首席で卒業した後、国家試験をパスしてキャリア警察官となった。

元来、キャリアは国民を守るというより国そのものを守るという意識が強い。

しかし秀昭は最前線の現場に立つことを志願し、捜査一課所属となった。

数年後には所属長級の警視への昇任が決まっているにも関わらずである。

当然、叩き上げの刑事たちからの風当たりは強かった。

副総監である父親の気も知らぬ坊っちゃん刑事と陰口をたたかれたこともあったらしい。

しかし秀昭は持ち前の明るさと行動力で体当たりの捜査にこなし、先輩刑事たちに己の実力を認めさせた。

今では捜査一課の警部補として、警視庁では知らぬ者がない名物刑事となっている。

達郎はそんな兄を変わり者と思いつつも、誇りに思っていた。

「ところで今日はなんなの、わざわざ呼び出したりして?」

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