電光石火×一騎当千
鬱蒼と茂った樹木の間を、細い山道がうねうねと延びている。

刻限は昼日中のちょうど正午というところだが、
樹齢何十年かという大木たちに遮られ、陽の光もまともに届かない山道は薄暗い。

その道の真ん中で、


「きゃあ!」


若い女が悲鳴を上げている。


「うひょ! 久々の上玉じゃねえか」


女を後ろから羽交い締めにした男が嬉しそうに言う。

辺りにはぞろぞろと、十人以上の男たちが女を囲んでいた。


「お嬢さん、一人でこんな山奥を歩いてたら危ないよォ~」

「何しろこの辺りにゃ、真っ昼間から山賊が出るって話だ」

「って俺たちのことなんだけどね~」


どの男も、手には刀。
人相は最悪だ。


「だ……誰かぁ──!」

「カワイイねー、誰も来ねえから好きなだけ叫べ」


か細い声で叫ぶ女の白い首筋に舌を這わせ、
女を押さえつけた男はさっそく着物の胸元に手を突っ込む。


「い、いや……あっ」


整った顔を歪めて、女が嬌声を上げた。
着物の背で、つやつやとした長い黒髪が揺れる。

どこかあどけなさの残る愛らしい顔からは、少女から大人の女性に成熟する過渡期であることが窺えるが、
大きく張った胸やふっくらとした赤い唇は、野に蠢く獣たちを興奮させるのに十分なほど熟れきった果実だ。

旅装束に身を包んだ姿から察するに、不運にも猛獣の巣に足を踏み入れた旅人というところか。


要するに通りかかった若い旅の娘を、この山道に出没する山賊たちが襲っているという、よくある構図だった。
< 2 / 46 >

この作品をシェア

pagetop