電光石火×一騎当千
「てめえ……」

女の目で燃える紫の炎を見て、タイホウの頭に上っていた煮え立った血液がすうっと下りてゆく。

「……何の神通力だ?」

カミナルが刀を引き、鞘に納めた。

「私は『電光石火』のカミナル」

紫の炎が消え、漆黒の瞳が夜の水面のように冷たくタイホウを映した。

「電光石火……だと?」

「いかなる攻撃も届く前にかわしてしまえば無意味。それは防御不可能の『空間を斬る』力とて、例外ではない」

そう語る彼女を愕然と凝視するタイホウと、騒然となっている周囲の兵の前で、


「覚えておくがいい。私が駆使するのは、『時を抜け出す』神通力だ」


そう言い残し、
一つに束ねた流れる長い黒髪をひるがえして


カミナルは颯爽と立ち去っていった。




「きゃああああ」

話を聞いていたコハルが、嬉しそうに絶叫した。

「なにソレなにソレ! やだあ、カミナルさんってばやっぱり素敵っ」

無邪気に騒ぐ少女を眺め、タイホウは乾いた声で笑う。

「ふふん、いっそあいつが男だったら良かったか?」

「何言ってるかなあ」

コハルは妙に熱っぽい目つきになって、

「『女だから』いいんじゃない」

「……?」

その言葉の真意と、コハルの紅潮した頬が何を意味するのか、

彼が去った後の女二人の会話を聞いていないタイホウには知る由もない。

「ふうん、本当に激辛だね。こんな出会い方じゃ確かに、お互い恋心を抱く余地とか……なさそうだよねえ」

コハルはガッカリした様子で吐息を漏らした。
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