gloom of the prince〜恋する研究室〜
また、話すことがなくなった。

だいたい、俺だってお喋りな方じゃない。

今度はお前が喋れよ。


「あのっ、レポートってどんなふうに書けばいいんですか?」


おっ、俺の念力が通じたのか?

にしても、レポートの書き方って……もうちょっと話しやすい内容はなかったのか?


「そうだねぇ、まずは操作手順を書いて――」

「じゃあ、この操作の意味って?」

「これはタンパク質の変性を防ぐために――」


俺の話って、そんなに面白いか?

彼女はキラキラした目で俺を見つめている。

さっきまで死んだ魚みたいな目してたくせに。

普通、実験中の方が楽しいんじゃないのか?

変なヤツ。

観察したいな、こいつの日常。

さっきまでイライラしてたと思ったら、今は俺の目の前で生き生きと話を聴いてる。

だんだん俺の話も実験からそれてきてるし。


「院ってどうなんですか?」

「どう、って言われても……。」


その質問がどうなんだ?
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