運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「先に帰ってろ。」
ジュンは、彼女を見て、一言だけ告げた。
「でも・・・」
彼女は、心配そうな顔でジュンを見つめる。
「いいから、さっさと・・・・」
ガンッ!!!
鈍い音が路地裏に響く。
ジュンは、片膝をついた。
ズキズキする後頭部をさわると、手には、澱んだ紅色の血がついてきた。
ジュンは、酷く頭痛のする頭を数回振りながら、立ち上がり、男達の方に振り返る。
ひとりの男が、角材のような棒を持っていた。
その棒の先には、少しだが、血がついていた。
「お前ら、卑怯だぞ。」
ジュンは、男達を睨みつける。
「喧嘩に卑怯もクソもあるかよ。お前が間抜けなだけだろ?」
そう言って、男達は、ゲラゲラと笑い声を上げた。
ジュンの背中には、先ほどより、さらに不安そうな彼女が、震えた手でジュンの背中を掴んでいた。
しかし、今のジュンには、もう、どうすることも出来なかった。
せめて、出来ることといえば、彼女を壁際によせて、その前に立ち、彼女の盾になることだけだった。