【天の雷・地の咆哮】
・・だから、か。
家に戻って還俗するよう勧める自分に、なぜヴェローナがかたくなに首を縦に振らなかったのか、
アニウスは、ようやっと理解することができた。
神官のまま妃になることは、無論不可能で、
ロカがヴェローナの身元を引き受け還俗させたことは、異例中の異例のことだった。
・・ユピテロカ王も、当然それをご存知だったというわけか。
アニウスはヴェローナが妾妃になる以前に、ロカとした話を思い出していた。
『お前の妹を、正妃にしようと思う』
唐突に呼び出されたロカの部屋。
いつも人前で見せる軽々しい若者の態度はそこにはなく、
思いつめたような、有無を言わせぬ緊張感がただよっていた。
『それはありがたいお言葉ですが、突然なぜでございます?
わが妹は、兄の私からみても、比類なき美しさと知性を兼ね備えていると思っております。
ですが、あまりにも急なお話ではございませんか』