【天の雷・地の咆哮】
一つの屋敷で世代交代が行われていた頃、
ウェスタの巫女になるべく、修行を積んでいる巫女見習いの少女たちは、
神殿のかたわらにある畑の中で、農作業に精を出していた。
「ねぇ、なんだか野菜の生育が今ひとつだと思わない?」
「そうねぇ。言われてみれば、ちょっと小ぶりな感じよね」
数人の少女たちが、採れたばかりの野菜を眺めながら額を寄せあう。
「嫌だなぁ。私たちの世話が悪いせいだって怒られないかしら」
「大丈夫よ。このところ雨が少なくて、どこも似たような感じだって」
「そうなの?」
一人の少女が、訳知り顔で胸を張って前へ歩み出た。
「こないだ巫女様たちが話してるの聞いたんだ。
川が干上がってる地域で、争いが起こってるんだって。
そのせいで、けが人が大勢出て、手当てを受けに神殿へやって来たそうよ」
得意げに語る少女の周りで、その話を聞いていた者たちは、
怖いわねぇ、とお互いの顔を見合わせた。