【天の雷・地の咆哮】

なぜ、ロカが自分を処分しなかったのか。


わざわざヴェローナを妃にすると宣言して挑発し、

怒りに任せて剣を抜いた自分に対し、同じように剣を抜いて笑ったロカ。


傷を負わせただけで、止めを刺さなかったロカ。


最初は、自分に恥をかかせるのが目的かと思った。

好きな女の前で生き恥をさらし、己の子どもに父だと告げることも許されず。

それがこの身に下された罰なのだと。


だが--。



・・ヴェローナ。俺は、犯した罪を一生かけて償おう。

君とマルスを見守ることで。



見上げた空に、月はない。

だが、それは確かにそこに存在したのだ。


ただ、目に見えぬだけで。


ホーエンはぎゅっと唇を噛み締めると、地に響くほどの唸り声を上げた。


見張り番をしていた兵士たちが、あわてて彼の元へ駆け出した。






< 173 / 214 >

この作品をシェア

pagetop