【天の雷・地の咆哮】
扉一枚を隔てて、ホーエンは高鳴る胸を沈めようと、
大きく息を吸い込んだ。
春とはいえ、夜はまだ冷える。しんと張り詰めた冷気が彼の肺を満たした。
外に目をやると、ウェスタ神殿の灯りが存在を主張する。
その灯りの誘惑に負け、群がる蛾のように、夜半の神殿に侵入した愚かな若い自分。
あの灯りを見るたびに、ホーエンは16年前に犯した己の罪を思い出すのだった。
苦しげに嗚咽を漏らしていたヴェローナの顔が、目の前にちらつく。
泣かせるつもりなどなかった。ただ自分の妻になって欲しかった。
自分が迎えに行けば、一緒に逃げてくれる。
二人一緒なら、愛という名の想いを糧に、どこまでも。そう、どこまでも。
そんな風に信じていた自分は、身勝手でひどく傲慢な人間だったのだろう。
・・ユピテロカ王。