【天の雷・地の咆哮】

ホーエンは視線を床に落とすと、低く唸るような声で搾り出すように言葉をつむいだ。

ロカが何か言いかけたが、躊躇するホーエンの背を押すように声をかけたのは、ニュクスの方だった。


「いいのよ、王のご命令なのだから」


「・・王」


「そうよ。ネプト王がなくなった今、ユピテロカが王です。

あなたは彼の護衛が任務だけれど、王が様子を見て来いと言うのだからそれに従う義務もあるでしょう。


それとも・・・。

あなたは新王に対して、何か別の思惑でもあるのかしら?」


「・・いえ。そんなことはございません」


明らかに何か含んだような返事のしかたではあったが、それがかえってニュクスの同情を誘った。


おそらくは子どもの父親がこの男かもしれないと思ったときから、

ニュクスはホーエンの中に自分の姿を投影していたのかもしれない。


想っても報われない、尽くしても叶うことのない、切ない気持ちを理解する人間として。


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