I ─アイ─
「…お母さん……?」
あたしの声にピクリとも反応しない。
青ざめた顔。少し冷たい手。
「…声も聞こえないの…?」
お父さんがゆっくりうなずく。
ごめんね…ごめんね…お母さん
お母さんの大きな手を、両手で精一杯握って、
ただただ、心の中でその言葉を何度もつぶやいた。
涙なんか、流す暇もない。
お医者さんが詳しい話をと、お父さんと私を呼ぶ。
でも、なんだか聞くのが少し怖かった。
「…………」
パタン
あたしは病室を出た。
「いつか、聞かなくても済む日が来るよ…。」
自分に、そう言い聞かせて。
逃げ道を作った。
自分を守る為に。
自分を犯罪者にしない為に。
あたしは卑怯な道を選んだんだ。
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