I ─アイ─



窓から見る家族は、手を繋いでいつも笑っていた。



世界で一番幸せなはずなのに、自分が負けているような気がして…


何かがあたしと違う気がして…


…一体、何が違うって言うの?




病院について、お母さんのいる病室を目指す。



あたしは早歩きでお母さんの病室に向かった。



見つかったのは廊下の奥にひっそりと並ぶ、個室部屋のひとつ。


高橋 藍子様 の文字


真新しい黒で書かれた文字




そこには、鼻に管を通し、点滴をするお母さんの姿。



生きているとは思えない程、青ざめた顔と色を失った唇。



お母さんの鼓動を表す寂しくてよく響く機械の音。




すべてが非現実的。




動く事はまず、不可能。

喋る事も笑う事も。



目を開ける事もなく、


呼吸する事すらままならない。




ただ、機械に頼り寝ているだけ。






お母さんは植物状態だった。





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