背中あわせのふたりは


自嘲するように、ふ、と息が漏れて、綾香は灰の長くなった煙草を携帯灰皿に押しつけた。


ベランダの手摺りの向こうには、白々しいほどの朝焼けが藍から青へ、青から白へ、白から茜へと移っていた。


もう一本煙草に火を点けたところで、背後から声がした。




「寝てないん?」


振り返ると、寝起きの顔をした彼がマグカップをふたつ持っていた。


その中で、ブラックのコーヒーと、ミルクの入ったコーヒーが揺れていた。


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