背中あわせのふたりは




──綾香、あんたは強い。


──ひとりで、大丈夫。




何かに負けそうになったとき、綾香はいつも心の中で言い聞かせる。


そうしないと、いつか自分が壊れてしまう気がしてならない。


それでも、きっと最後には、自分自身に向かって敗北宣言をしなくてはならない日が訪れる。


大丈夫、が口癖になっている自身に、綾香はまた苦笑する。




──あの男が来た日の夜は、長い。


.
< 33 / 138 >

この作品をシェア

pagetop