海が呼ぶから
05.流されて

あなたは誰なの

「ところで…ここはどこなのですか?」

渡された温かいスープを頬張りながら、ウチは聞いた。

「船の上」

や…そうぢゃなくて…。

ウチの不満な視線に気づき、"キャプテン"は言い直した。

「ミガルの南の海域」

予想はしていたけど、聞いた事の無い地名。

部屋の中にあった海が、日本だとは思えない色をしていた。

日本の海岸から見る海は、少し濃い、暗めの青色をしている。

(沖縄とか、南の方はまた違うのだろうけど。)

部屋の中にあった海は、明るいエメラルド色だった。

(でも、不思議と言葉は通じてるんだよね…)

黙り込んだウチに、"キャプテン"は勘違いしたのか、慰めるように言った。

言われた方は慰めにならなかったんだけど。

「大丈夫だ、お前が誰かに海に突き落とされたなら、俺が復讐してやる。何たって、俺は泣く子もだまる、海賊"東風の旅団"の頭だ!」

「…か、海賊?」

(海賊って、海のギャングで、えーと、麦わら…は関係なくて…)

日常生活で、全く聞かない単語に、ウチは混乱した。

「っと、そう言えば、名前、教えて無かったな。」

ウチの混乱をよそに、"キャプテン"は話を進める。
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