海が呼ぶから

引き上げたモノ

引き上げた人物が、目を見開き、俺の瞳とぶつかる。

一番の感想は、ツヨい瞳だ…と思った。

だが、次の瞬間、その感想は脆くも崩れ去った。

くしゃりと歪んだ顔。

華奢な手が、顔を覆い、隠しきれなかった雫がこぼれ落ちた。

声も上げず、耐える姿に、我慢出来ずに俺は自分の胸へと、彼女を引き込んだ。

一つに結ばれた濡れそぼった髪が、俺の服を濡らす。

(もっとも、彼女を助けるためにすでにずぶ濡れだったが)

「何事っすか〜船長(キャプテン)。」

突然海に飛び込んだ俺を驚きのまま見ていた、船の部下の一人が脳天気に声をかけてきた。

目線一つで黙らせて、俺は羽織っていたマントを外し、彼女にかけてやった。

「遭難者らしい。取りあえず、一人だけらしいから、医務室に連れて行く。お前は料理長にスープでも用意して貰って来い。」

「アイサー、船長」

好奇心を隠し切れていない瞳だったが、キャプテンの命令は絶対を徹底している日頃の訓練の賜物だろう。

そのまま、無駄口を叩かず、命令に従い食堂へと向かう部下を見送り、俺は海から引き上げた彼女を連れて、医務室へと向かった。
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