キミの手 キミの体温

“どういうこと……?”



口に出そうとした言葉が喉に詰まって声にならない。



ただ目を見開いて立ち尽くすわたしは葦原くんの予想通りだったのか。



「やっぱり知らないんですね。あの人の過去に何があったか」



短く笑った葦原くんはさも楽しそうに口元を歪めている。



……宝珠の過去。


瑠璃おばさんが亡くなってから宝珠がどんな風に生きてきたのか。


宝珠を傷付けてしまうのが怖くて聞けないでいたこと。


それに。
昨日の宝珠の様子が不意に蘇る。



ソファーでわたしの肌に触れた途端……宝珠は苦しそうに表情を歪ませていた。


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