キミの手 キミの体温
「トラウマがあるんですよ」
「……待って!」
あの時。
宝珠が何も言わなかったのは……きっと理由があるから。
だから、今から葦原くんが言おうとしてることを彼の口から聞いちゃいけない。
そう思って制止するわたしの声も無視して。
「自分を育ててくれた叔母にレイプされてたんですよ」
言い放たれた言葉はわたしの頭を真っ白に染めてしまう。
……それだけじゃない。
「……っ!!」
開かれたままだった印刷室の扉の奥には宝珠と水希が居て。
「ごめんなさい。アナタの代わりに言っちゃいましたよ。兄さん」
一瞥した葦原くんの言葉で呆然としていた宝珠は、
「っ宝珠!!」
苦しそうに表情を歪めて走り去ってしまった。