淡い満月
 
 
殴られるはずだった手は私を優しく包み込み

怒鳴りつけられるはずだった口からは何も聞こえてこない。



彼はただ黙って私を抱きしめてくれている。


どんな言葉をかけられるよりも温かく、私の胸に直接届く感覚に

私は彼の中で小さく泣いた。








しばらくして、私を少し離した彼は


「これは俺が風邪ひいたときに使うから。」


低いかすれるような声で言った。


彼の顔がすごく近くて、息がかかるくらい。

ドキドキし過ぎてどうにかなりそう…。




「か、片桐さん…?」

「泊まっていくといいよ。」



突然の言葉に時間が止まる。

彼からは絶対に出てこないと思っていた言葉。



「小波さん、俺がお金渡さないと帰れないんだから。」


そう言って、私はもう一度彼に引き寄せられた。
 
 
 
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