Chess
ちらりと彼女を見やる。

微笑んで、こう言われた。

「よかったね、プロじゃなくて」

「は?」

「時間制限なしじゃない」

「そう、だね」

つまり、たっぷり考えていいよという、自信の現れか。

……いいだろう。

見えたよ。

わかった。

僕はルークを諦める。

今、僕を邪魔しているのは、ルークだ。

僕のルークも彼女のルークも一緒になって、僕の足を引っ張っている。

f4ビショップを、e5へ。

彼女のルークを、取った。

瞬間、動いたのはd6のポーン!

d6から斜めへ、e5のビショップを討ち取りに来る!

黒の女王陛下が走る直線カタパルトが、出来上がってしまった。

だが、僕だって足掻かせてもらう!

クイーンがどう動くかは、わからない。

予想できるのは二つだ。

f6ルークを取りに来るか、d4ラインを直進してくるか。

クイーンの機動力を、彼女がどれほど発揮させるかはわからない。

だからこっちも備えさせてもらう。
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