とんでも腐敵☆パートナー
 庇ったつもりはない。
 ただ、チンピラ共に、お前達の相手は俺だ、と再認識させただけだ。
 
「女の前だからってカッコつけてんじゃねぇぞ。その整った顔、ぐちゃぐちゃにしてやろうか?」
 
 脅しには応えず、目元のサングラスを引き抜く。薄く嘲りの笑みを浮かべると、チンピラ共は僅かにたじろいだ。
 
「ここでやってもいいが、人目がありすぎるんじゃないか? すぐに警察を呼ばれるぞ」
 
 賭け――という程でもないが、さっきグリコが警察を呼ぶと脅した時の、男達のあからさまに怯んだ様子から、何か警察に関わりたくない事情があるだろうと踏んだ。
 
 手持ちのカードは有効に使え、というのが俺の信条だ。
 
「サツに来られると、困ったことになるだろう?」
 
「うっ――」
 
 どうやら大当たりのようだ。反応が分かりやすくて助かる。
 
 チンピラ共は一歩退き、憎々しげに俺を睨みつける。俺はそれをものともせず受け止める。
 
 はったりで負けたことはない。
 
 俺は既に優勢を確信していた。
 
 だが、睨み合いは拍子抜けする程あっさりと終了した。
 
 チンピラの一人が、先頭に立つリーダー格の男に、何か耳打ちをした途端、奴らは急に冷静さを取り戻したのだ。
 
「へっ……そうだな。わざわざここでやり合わなくてもな……」
 
 俺に意味深な視線を注ぎつつ、にやりとほくそ笑む男達。
 
 これまでのやり取りを、突然リセットされたような違和感を覚える。
 
 というか、何かよからぬことを企んでいるのは一目瞭然だった。
 
 それが何であるかを探ろうと、俺は素早く鎌かけの言葉を選び、口を開いたが――
 
 
 直後、男達との対話を中断せざるを得ない状況がのしかかってきて、声を発することは叶わなかった。
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