とんでも腐敵☆パートナー
「貴方と彼の本番ビデオです」
 
 
 …………………………………………。
 
 
「は?」
 
 俺はたっぷり数秒間固まった。
 
「は? じゃありません! 貴方と彼のエッチシーンをビデオに収めて渡してくださいって言ってるんです! あ、ちなみに初モノでお願いしますよ?」
 
 なんだこの女は。
 
 いやむしろなんだこのイキモノは。
 
 俺は、得体の知れない地球外生命体と遭遇したような気分に襲われた。
 
 背中を嫌な汗が流れる。
 
 これまでの人生、ここまで俺を狼狽え(うろたえ)させた者はいなかった。
 
 恐怖すら感じているかもしれない。
 
 この眼前のナマモノに。
 
「お、俺と拝島の……なに言って……普通、女がそういうことを堂々と口にするか?」
 
「私はすでに普通の女ではありません。……腐道に堕ちてしまった女なのです」
 
 ふっと哀愁を漂わせる女に、俺は翻弄されるばかりだった。
 
 言葉を失う俺に畳み掛けるように、女は続けた。
 
「貴方なら写真やビデオを撮ることに抵抗はない筈です。どうせ他の男性との行為や卑猥な写真を撮ったりしてるでしょう? そのおこぼれを、ちょっといただいてもいいじゃないですか」
 
 何故知ってる。なんでそんなことが分かるんだ。
 
「いかがでしょう? 攻めノ介さん」
 
「だから誰が攻めノ介だ!」
 
「じゃあなんてお呼びすればいいんですか?」
 
「俺には朽木冬也(くちきとうや)という名前がある!」
 
 言ってから「しまった」と思った。
 
「うふふふ……朽木冬也さんですか」
 
 乗せられて、つい本名をばらしてしまった。
 なんという失態だ。
 
「凄いです! 名前までピッタシかんかんです! まさに理想の攻め男(せめお)! 栗子感激ですーっ!」
 
 もう言ってる言葉が理解不能で頭が痛くなってきた。誰でもいい。誰かこいつを殺してくれ。
 
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