とんでも腐敵☆パートナー
 あたしは手をわきわきと蠢かせ、足早に二人に近付いた。
 
「結構難しいわねこれ」
 
「あ、もう少しこう、腕の構えをね……」
 
 その手は使わせん!
 
 背後を通り過ぎるフリをしながら、さりげなくドンっと高地さんの肩にぶつかる。
 
「わっ!」
 
 バランスを崩した高地さんは、横に倒れそうになって思わず祥子の肩を掴んだようだ。
 
「セクハラ2!」
 
 祥子の怒声と共に繰り出された蹴りを横腹に浴び、「げふうっ!」とか呻き声をあげて床に沈むエロ男。
 
 さらに頭に祥子の靴底を食らい、しゃくとり虫のような格好で床に突っ伏した。
 
 ふ……天誅でござる。
 
 また二人から離れた場所に戻って足を止め、にやりとほくそ笑む。
 
 と、そんなあたしの頭にぽふっと何かが乗っかった。
 
 ん?
 
 見上げれば、拝島さんの微かな笑顔。
 
 頭に手をやると、ぽふぽふしてて軽い物体に手が触れる。
 
 ケ○ロ軍曹のヌイグルミだった。
 
「これ――」
 
「あげる」
 
 甘いマスクがにこっと目を細める。
 
「わっ、いいんですか! 取れたんだこれ~~! 凄いっ!」
 
「結構簡単だったよ」
 
 はにかんだ顔がまた可愛らしい。
 
 あーもうなんだかなぁ~。密かに女殺しじゃないか? このヒト。
 
 あたしは軽くため息をついた。
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