とんでも腐敵☆パートナー
 そんな俺の怒りを毛の先ほども感じ取れない高地。両のこめかみを手で擦りながら平和そうな顔でぼそぼそと洩らす。
 
「しっかしグリコちゃんに彼氏かぁ~。意外っつーかなんつーか……」
 
 それは嘘だと俺は知っているが口には出さずに空になった紙コップを握りつぶす。彼氏がいるという嘘は、グリコが俺との仲を周囲に誤解されないようにとの配慮から言い出したのだ。
 
「お前ら見たことあんの? その彼氏」
 
「いや、ないな」
 
「俺もないよ」
 
 架空の恋人なのだから姿がある筈もない。
 
 高地の小うるさい追及に内心眉をしかめながら答える。
 
「どんな奴か知りたくね? 知りたいよな?」
 
「別に」
 
「まぁちょっとは興味あるけど……」
 
 急に目を輝かせて訊く高地を訝しんで素っ気無く答えたが、拝島の返事は高地を喜ばせたようだ。ぱっと顔を上げ、身を乗り出してくる高地。
 
「じゃあグリコちゃんの彼氏誘ってダブルデート作戦で……」
 
 
『結局それかいっ!』
 
 
 俺と拝島の蹴りが、その顔面にダブルヒットした。
 
 
 
 
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