とんでも腐敵☆パートナー
 拝島は何故かバツの悪そうな顔で俺の顔を窺い見る。
 
「高地が何かやらかさないかもちょっと心配だったしさ」
 
 言い訳めいて聞こえるのは俺の気のせいだろうか。
 
 まさか拝島は、まだ俺とグリコの仲を誤解してるのか?
 
「なんだなんだ? 三角関係かお前ら?」
 
 高地は椅子の背もたれに顎を乗せて妙に楽しそうに言う。
 
「ちっ! 違うよっ! だいたい栗子ちゃんにはちゃんと彼氏いるんだからさっ!」
 
「え? マジ? 変わった趣味の奴って結構いるもんだなぁ~」
 
「高地。『結構』の部分に、まさか俺は含まれてないよな?」
 
 俺は席を立ち、高地の元に一歩踏み出すと、にこやかな笑みを貼り付けて訊いた。
 
 両の拳で高地の頭を挟みながら。つい力が入ってしまうのは、俺的親愛の証ということにしておこう。
 
「す、すびばせん……。もちろん入っておりません……」
 
 泣きの入った高地の頭から静かに手を離す。
 
「分かってくれればいいんだよ、高地」
 
「ううっ……時々朽木が別人に見える……。怖いよ祥子ちゃぁ~ん」
 
「高地が余計なこと言うからだよ」
 
 拝島も口を尖らせてじろっと高地を睨めつける。
 
 俺は長椅子に戻り、残りの冷めたコーヒーを飲み干した。
 
 飲みながら考えることはグリコへの報復だ。勝手に拝島に接近したことへの罰を、どうやって与えてやろうか。スマキにしてベランダから吊るすだけでは気が治まらない。
 
 いや、グリコだけではない。高地も同罪だ。
 こいつが立倉にいらぬちょっかいをかけなければ、拝島とグリコがメールのやり取りをする仲になどならなかったのだ。
 
 二人まとめて東京湾にでも沈めてやろうか。
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