とんでも腐敵☆パートナー

7-2. エロはもろ見せよりチラリズムが基本

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 あたしはふらりと店にやってきた、イケメン茶髪青年を指差したまま、あんぐりと口を開けた。
 
 そうだそうだ。夏休み前に、合コン中に見かけた、朽木さんと一緒に歩いてたイケメンくんだっ!
 
 あの時の顔と今の顔があまりに印象が違ってたので、すぐに思い出せなかったんだ。
 
 じろじろと上から下まで遠慮会釈なくその青年を観察するあたし。
 
 こ、この人が朽木さんとあーんなことや、こーんなことや、あまつさえああああんなことまでやっちゃってうひうへうはふがぁーっ!
 
「は、鼻血が……」
 
「桑名くん……頼むから仕事して……」
 
 亡霊のように背後でしくしくお願いする店長の声は聞かなかったことにしてティッシュをポケットから取り出すあたし。
 
 それを丸めて鼻に詰めて再度笑顔を作り直す。
 
「ひ、ひらっひゃいまへ~。ごひゅーもんはおひまりれひょうか?」
 
 メニュー表の上に手をかざし、マニュアル通りに応対する。うん、かんぺきっ!
 
「え、えーと……」
 
 しかし彼の反応は芳しくない。ちゃんとその場を取り繕ったはずなのに、頬を引き攣らせて引け腰であたしを凝視する。
 
 なんで怯えてんの?
 
「桑名さん……鼻のティッシュは取った方が……」
 
 隣のレジ担当のおねーさんがそっと耳打ちしてくれた。
 
 うーむ。接客業務に鼻ティッシュはNGか。
 
 またひとつ世間を学んだあたしは鼻のティッシュを抜き取り、ついでにひとつ鼻をかんでから彼にもう一度向き直った。
 
「ご注文はお決まりでしょうか?」
 
 彼はまだ怯えは抜けきらないものの、少しほっとした様子で、
 
「あ、はい、えーと、ウーロン茶のSで……」
  
「いやいや、どちらかといえばアナタはMでしょう」
 
「ぐわなぐぅぅ~~~~んっ」
 
 背後の亡霊がうるさい。分かった分かりましたよ。マジメにやりますよー。
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