とんでも腐敵☆パートナー
「ウーロン茶のSサイズがおひとつですね。その他にご注文はございませんでしょうか?」
 
「あ、それだけで結構です」
 
 うーん、控えめな喋りとウサギのような恐縮ぶりが可愛い。
 
 さっきのきょとんとした様子もラブリーだった。朽木さんってやっぱ面食いだ。
 
 そんなことを考えながら、その青年の顔をじっと見てると、ふとあることに気付いた。
 
 あれ? なんか、どことなく拝島さんに似てる。
 
 顔の作りは全然違うんだけど、雰囲気がどことなく。全体の柔らかい印象がそう感じさせるのかどうかよく分からないけど。ああ、でも。
 
 そっか。それで――――
 
 何故朽木さんがこの人を愛人にしてるのか合点がいった。
 
 彼は落ち着かない様子で二回ほどあたしをちらちら振り返りつつ、トレイを持って席の方に向かって行った。
 
 あたしはまたすぐやって来たお客さんの対応に追われ、とりあえずは彼の観察は後回しにする。
 
 できれば上手くコンタクトを取りたいものだ。朽木さんとの睦み事について色々聞いてみたい。
 
 業務をこなしつつちらっと盗み見ると、彼はまた翳りのある表情に戻って、窓の外にじっと目をこらしている。
 
 何かを見つめてるようだ。
 
 なんだろう? と視線の先をウィンドウ越しに追いかけた時、ガァーッと入り口の自動ドアが開いて、見慣れたけど見飽きない素敵な姿が入ってきた。
 
「朽木さんっ! 拝島さんっ!」
 
 うひゃぁ~~~~んっ! しゅてきぃ~~っ!
 
 あんまり嬉しくてバンザイポーズで跳ね上がる。着地した拍子に足を滑らせそうになった。あぶなっ。
 
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