とんでも腐敵☆パートナー
 この店、結構急な勾配の坂道にあり、ミニの横に並んだ車はみな下を向く形で停車している。
 
 お店の前の広々としたガレージは、両サイドに駐車スペースを設けられてるみたいなんだけど、今は向かいのスペースには車はなく、コンクリートの塀が聳え立っている。
 
 で、停車してるはずのミニは、その塀に向かって、ゆっくり、ゆっくり、移動してるように見えるようないや感じるような…………。
 
 
「えええええええええええっっ!!」
 
 
 途端、あたしは腹の底から搾り出すような叫び声をあげ、慌ててドアを開いて運転席に乗り込んだ。
 
「わっ!」
「な、なんだっ!?」
 
 驚いた拝島さんと朽木さんの声が聞こえる。
 
 でもあたしは二人を振り返る余裕なんかなくて、とりあえず前面パネルのスイッチを手当たり次第に押してみた。
 
 どれが何のスイッチなのかさっぱり分からない。
 
 ブレーキッ! ブレーキはどれなのよっ!
 
 色々押したり捻ったりしていると。
 
 ブルルルルルンッ
 
 エンジン音らしき音があがった。
 
 わーっ! エンジンかかっちゃったよう――――っ!
 
 段々頭がパニックになってくる。
 
「グリコっ! 何してるんだ!」
 
 朽木さんが運転席のドアを開けて怒鳴り込んできた。
 
「うるさいっ! 止めようとしてるに決まってんでしょ!」
 
 反射的に怒鳴り返す。
 
 車は依然、ゆっくりと前進していた。
 
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