とんでも腐敵☆パートナー
あたしは朽木さんを殴ってやろうと身を乗り出した。
 
 しかし、章くんの様子がおかしいのに気付き、足を止める。
 
「は……はは……やっぱり僕って……どこまでも……」
 
 斜め後ろから聞こえる声は、絶望の響きを含んでいた。
 
「父さんにも……母さんにも見放されて……先輩にも……。はは……誰かの重荷になってばかりなんだ僕は……」
 
 あたしは嫌な予感に背後を振り返った。
 
 そしてぎょっと固まる。
 
 完全な絶望に囚われた章くんが、手にしていたもの――
 
 
 それは、一度取り上げた折り畳み式ナイフだった。
 
 
 もう拝島さんを狙うことはないだろうと思って返してあげたのだ。バカだあたし。こういう使い方だってあったのに。
 
 なんで気付かなかったんだろう。
 
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