とんでも腐敵☆パートナー
「章! 何してる!」
 
「さようなら先輩。僕はもう、生きる意味が見出せない……。本当はとっくに終わらせてる筈だったんだ。先輩がいたから……だから今まで生きてこれた。でも、もう――」
 
 チャキッと鋭い切っ先を自分の喉に向ける。そんな痛々しい姿を見るために、ここに連れてきた訳じゃない。絶望させるために連れてきた訳じゃない。
 
「よせ! 章!」
 
「もう……楽になりたいんです……」
 
 楽になる!? そんなの――章くんのバカッ!
 
 バカバカッ! 章くんも朽木さんも大バカだっ!! 
 
 
 こんのバカ男ども~~~~っ!!
 
 
 あたしの体は既に動いてた。
 
 間に合わないかもしれない。でもなんとかする! この伸ばした手の先がどうなっても、絶対なんとかしてみせるっ!
 
 
 景色がまるでスローモーションのように流れた。
 
 
 身を乗り出す朽木さん。ナイフが真っ直ぐ空を切る。あたしの手が、章くんの喉を塞ぐ。肩がぶつかる。鈍い衝撃。章くんと重なりながら横に倒れる。上向いた章くんの細い腕。一瞬視界に映る鋭い刃。横向きに接する冷たい床――
 
 
 そして、銀色の光があたしに向かって落ちてきた。
 
 
 
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