とんでも腐敵☆パートナー
『僕は両親の期待に応えられない……』
 
 最初は鬱陶しかった。
 
 人付き合いを広げるつもりはなかったのに、家族の話を聞かされ、いつのまにか気になる存在になっていた。
 
『誰かを守る仕事は魅力的ですよね……』
 
 自分に言い聞かせるように。呟く章の顔は、しかし楽しそうには見えなかった。
 
 親の言葉に縛られて。自分の生きたい道が見えていない。
 
 親に振り回されて――
 
 
 俺と、同じだ。
 
 
 そう感じた時、章を追い払う気はなくなった。
 
 章自身を見てみると、法廷に立つ気概などとてもあるようには見えなくて。
 
 優しい章は、人が喜んでくれるのを見るのが好きだった。
 
 だからこそ親の気落ちした顔を見るのが辛い。そんな章に俺がしてやれることはあるだろうか?
 
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