とんでも腐敵☆パートナー
 のぼせた顔のグリコを寝室に連れて行き、ベッドに寝かせた。女を寝室に引っ張りこむのは主義に反するがこの際やむを得ない。
 
 グリコの出血が落ち着くのを待ってから、俺は情けなくも作業室の血溜まりを雑巾で拭いた。他人の鼻血の後始末をするなどある意味貴重な体験……なわけがない。
 
 
 まったくとんだ疫病神だ。
 
 
 水で絞ったタオルを持って、ようやく顔色が戻ったグリコの傍らに腰掛ける。
 
「ほら、これで頭を冷やせ」
 
「ありがとー朽木さん」
 
 タオルを額に当ててグリコはにへらと笑った。
 それから目をきらきらと輝かせながら深く息を吐き出して言ったのだ。
  
「ふはぁ~いいもん見せてもらったわ。鎖骨萌えた~~」
 
「俺は最低なもん見せられて心底哀しいよ……」
 
 なんだか泣きたい気分になった。
 
 なんで脅迫してきた相手を介抱してやらなきゃいけないんだ。なんなんだこの女は。規格外にも程がある。
 
「さっきのビデオに撮りたかったな~」
「お前相手にはもう二度とやらん。失血死されたら洒落にならん」
「んじゃ拝島さん相手にやるのを楽しみにしておく」
「ったく、お前という女は…………」
 
 呆れてため息をついた。
 だが、不思議ともう苛立ちは感じなかった。
 
 結局、この女にあるのは下心ばかりで悪意はないのだ。本気で警戒するのも馬鹿らしい。
 
 と。
 
 ぐ~きゅるる~~
 
「う……お腹すいた……」
 
 きっちり文字通りの音をたてたグリコに苦笑させられ、俺はベッドの端から腰を上げた。
 
「仕方ないな。なんか作ってやるよ。パスタでいいか?」
 
 妹の世話でも焼いてる気分だ。
 
「うん! アルデンテでよろしくお願いしますシェフ!」
 
 顔を輝かせるグリコはすっかり元に戻っている。
 
「調子に乗るな」
 
 拳で額を小突いてやり、キッチンに向かった。
 
 
 
 
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