とんでも腐敵☆パートナー

1-2. とりあえずサンダル履いときゃギャルぶれる

「なぁ朽木」
 
 ふいに名を呼ばれ、振り向いた俺は、陽光に照らされた爽やかな笑顔を目に捉える。
 
「なんだ、拝島?」
 
 笑顔の主は俺が返事をすると、なんだか楽しげに笑みを深める。
 
 そんな顔を見る度に、胸の奥で何かがとくんと揺れ、俺は自然と触れたくなる指先を震わせる。そして衝動を押しとどめるため、己に言い聞かせるのだ。
 
 まだ、早い。
 
 急いては事を仕損じる。
 触れるのはぎりぎりまで待つんだ。
 
 そんな時の俺の目は、獲物を狙う鷹のように鋭くなってることだろう。
 
 だが、すかさず笑顔の仮面を被り、それを巧妙に隠す。長年培ってきた技だ。
 
 俺は口角を操作し、笑みの形を作って拝島の次の言葉を待つ。
 
「さっきから、感じるだろ?」
 
 ああ、俺はいつも感じてる。お前に対して。
 もっと言うならお前の体に対して、己の中心に渦巻く欲望が頭をもたげるのを感じる。
 
 だが、拝島がそんなことを言ってるのではないことは、よ~~~~~く解かっている。
 
 何故なら俺も感じてるからだ。
 
 
 熱い視線。
 
 
 というよりは。
 
 ねっとりと背中に絡みつくような、禍々しい視線。
 
 そんな視線を、駅を出て少し進んだあたりから、ずっと感じていたのだ。
 
 
 電車を降りた人の流れの多くは商店街に向かった。しかし、俺と拝島の目的地は、繁華街の中にはない。
 
 駅前デパートの後ろを回る道を行き、大きな道路沿いの、雑居ビルが立ち並ぶ方面へと足を運んだ。
 
 そして駅前の賑やかさが遠ざかり、辺りがオフィス街の様相を呈してきたところで、拝島が今のように言ったのだ。
 
 人の視線に鈍感な拝島が気付く程とは相当だ。
 確かに、その怪しい気配は露骨過ぎて、気付かない方がおかしいと言えよう。

 
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