君へ

19

どくどくどくどくどく。
まだ心臓が煩い。
永久くんに髪を乾かしてもらって。
か、顔が近くて。
綺麗な睫毛も数えられそうだった。
思い出しただけで、見なくても自分の顔が真っ赤になるのが予想つく。
「……っ」
顔を覆っていた掌を口元に持っていく。
そうしないと嗚咽が止められなかった。
永久くんの中で自分は小学四年生の子供のままなのだろうか。
否。
自分を、意識していないだけか。
私は愚かで可哀相なあの頃のまま。
だから。
あんなに近くで食べさせて等と言うのか。
どくどくどくどくどく。
静まれ。
どん、胸を叩く。
意識する必要なんかない。
しちゃ駄目だ。
必要以上の好意はこの関係を崩すものでしかない。

どん。


鎮まれ。
この想い、全て。
冷えて、凍えて奥底に落ちればいい。


……幾らそうしていただろう。
永久くんにもう遅いからと自室に送られ、部屋に入った瞬間、自責の念にかられた。
あんなに私を助けて優しくしてくれる永久くんにもっと、更にもっととねだる私。
永久くん………。


この気持ちをどう消化すればいいの。
私はどうすればこの全ての醜い膿を失くして貴方の傍にいる事を赦されるの。

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